本帰国後に、海外に置きっぱなしのお金のせいで面倒になることリスト
はじめに
自分は、投資等には興味なくお金に関する面倒なことはしたくない考えなので、最低限のこと(年金・非課税投資等)しかしてなかったのですが、意図に反して5か国(米国・カナダ・フランス・香港・シンガポール)8箇所に口座や金融商品が散らばってしまいました。散らばっていることは、ある意味リスク管理には有利とも言えるのですが、以前と比べて、
- 節税効果はない(後述)
- 日本の口座に外貨のまま持つことも可能
- 香港にお金を置いておくのは…(実際、香港の人が口座凍結されたケースもあったし、世界情勢的には…)
- もし自分に何かあったとき、全部連絡が英語だし、家族が何もできなさそう。
ということで、日本に帰国した区切りで口座等の整理を試みたのですが、いろいろと面倒があることが分かりました…。
この記事は、ほぼ自分の愚痴で人生で1回しか使わないことばかりですが、将来日本に帰国する予定がある人のチェック用にも役立つかもしれません。
お金に関することについて
クレジットカード
- 自動更新できない
- 居住してないとクレジットカードの更新ができない場合があります。
- 自動更新されてしまって損する
- 海外のクレジットカードは、日本では使えない場合が多々あります。
- 海外のクレジットカードを使うことで不正な取引との疑いで、一時停止になることは普通にあります。
- 最低使用額が指定されているケースもあります。使用額は月7000円以下のときでも7000円取られるといった状況です。クレジットカードが使用できなくなったからと言ってそのままにしておいて、思わぬ高額の使用料を毎月とられるのには注意しましょう。
Wise(旧 TransferWise)
送金手数料が安い*1ということで有名な送金サービスWiseがあります。以下の点には注意してください。
- 初期画面に表示されないその他の手数料もいろいろある。
以下はWiseのメッセージより
100万円を超える日本円への送金は、SWIFTにて送金されます。SWIFT送金では、TransferWiseで発生する手数料以外に受取銀行や中継銀行から課金される手数料が発生する場合がございます。この手数料はTransferWiseが課金しているものではないため、最終的な受取額を当社でも把握することができかねます。恐れ入りますが、ご理解いただければ幸いでございます
この辺は普通の銀行間の送金と一緒です。
- 同一通貨の海外送金はできない。
- 違う通貨に換えることの為替手数料は大きいので、国外の銀行から日本の銀行へ同一通貨のまま送りたいことがありますがそれはできません。
- Wiseではなく普通の送金なら送れることもありますが、同一通貨のリフレクションフィーと言われる手数料がかかります。でも為替手数料よりは全然やすいです。
- 2000万円~3000万円以上の送金はできなくなった。
- 記事の通りです https://wise.com/gb/blog/lower-limits-for-large-transfers
- また多額の送金は、そもそもwiseで指定される口座にその金額をインターネットバンキングで送れず失敗するというケースもあります。これもwiseのメッセージで警告がでます。
租税条約や税務上の居住地に関する届け出
- ちゃんと所得税等を納めて出国しても、出国後に収入を得るようなケースもあります。例えば出国後に、海外保険会社(年金用)から「租税条約に関する届出 (https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2888.htm)」 を求められたことがありました。これをやらないと海外と日本で二重課税されてしまう恐れがあります。こういう重要な連絡は普通Eメールではなく手紙でくるので、ちゃんとお金を置いているうちは住所の更新等を常にしておくべきです。
- 住所変更先を日本にする時や送金を行う際に、税務上の居住地に関する届け出、"Jurisdiction of tax residence"と"TIN(Tax Identification Number)"を問われます。前者は日本、後者は日本の場合はマイナンバーになります。2016年以前から海外在住の人は、マイナンバーが一度も付与されていない状態だと思うので、手続きは日本に住民票を移しマイナンバーを付与されてからになります。
外国払い小切手は、日本のほとんどの銀行では換金できない
欧米では小切手は安心できるお金の受け渡し方法としてまだ使われています。年金の掛け金の払い戻しに海外小切手が日本に送付されたのですが、これは問題がありました。日本の銀行は、ほぼ海外小切手の取り扱いを終了しています。こちらの記事( https://yatsuyaku.com/clean_bill/ )の通りです。唯一使えるSMBC信託銀行プレスティアにも直接伺ったのですが、手数料等を考えると海外小切手のためだけに口座を作るのはお勧めしないようでした。ちなみに、インターネットバンキングで小切手を換金する方法は考えたのですが、少なくともHSBC香港ではインターネットバンキングに対応した小切手でないと不可能でした。小切手は現地で換金しましょう。
マネーロンダリングに対して厳しくなっている
昔たまに見かけた「海外にお金を置いといて税金回避!」みたいなのは、ただの脱税になるだけです。以前よりもとても厳しくなっています。
- 海外の利息や株式の利益も、日本の税金の対象となります。
- 国外に5,000万円を超える財産を持つと、国外財産調書制度で把握されます。(https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ko/J0689.html )国外財産調書制度とは、適正な課税の確保のため、国外に5,000万円を超える財産(預金、有価証券や不動産など)を持つ日本国内の居住者に、その内容を記した国外財産調書の提出を義務づける制度です。2014年度から始まり、現金預金、不動産、有価証券、骨董品や貴金属類まで、その年の年末時点で国外にあるすべての財産が対象となります。翌年3月15日までに税務署に提出しなければなりません。
- 相続税についても、国外資産についてもかかります。相続人も被相続人も10年以上住んでいる場合のみ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138.htm)
少し前までは、香港へHSBC香港の口座を作るためツアーがありわんさか日本人がきていたそうです(話を聞く限りそういうツアー自体かなり怪しかったようですが)が、今だに残る利点といえば「海外銀行にしかない魅力的な金融商品」がほしいときぐらいでしょうか。でも、それこそ素人では判断では難しいと思うので、あくまで自分の意見ですが、海外に投資する興味があっても普通に日本の口座を使えばよいのではないかなと思います。
口座閉鎖する意思があり、日本に戻ってくる前に口座が閉鎖できる状態であれば、現地にいる間に閉鎖してしまった方が良い
- 実際には、最終給与受け取り・税金支払い等で、その国を去ったあとでも一定期間口座を残しておく必要がある場合が多いですが、もし閉鎖できるなら現地にいる間に閉鎖したほうが良いと思います。インターネットバンキングでも口座閉鎖だけはできないケースがほとんどだと思います。
- 代替案として、「口座閉鎖はせずに、後で日本の口座にほぼ全額送金して、空っぽにしておく」という考えもあると思います。ただ、現地採用で海外から本帰国するというケースは、送金額も大きくなると思うので、やはり現地にいる間にやってしまったほうが楽だと思います。送金方法に寄らず税金に関する手続きは全て済ませておく必要があり、多額の送金では審査もあります( https://moneykit.net/visitor/fx/fx07.html )。日本のサポートのほうが親切なので、海外にいる間に海外の面倒は解決したほうが良いと思います。
連絡方法について
インターネットバンキング
ほとんどの手続きはインターネットバンキングでできるので、他の国に引っ越ししたときは頼みの綱です。絶対途切れさせてしまってはいけません!途切れた時に面倒にならないために、連絡先更新はすぐにやっておくのが大事です。
- パスワードとIDさえ覚えておけば大丈夫に思えますが、出国後に思わぬところでアクセスが途絶えたケースを挙げておきます。
- 2段階認証が新たに追加されたが、2段階認証の登録が現地電話番号へのSMS経由のみ。
- ストックオプション用の口座で、会社連絡先しか登録されておらず、転職後にアクセス不可能。
- デジタルトークン(ちっちゃい計算機みたいなやつでパスワードがでる)の電池切れ。
- 一定期間インターネットバンキングでの操作がないと、限度額が減ったり口座が一時凍結になる銀行もあります。
- 最悪の場合、口座凍結解除するには、銀行に直接いかないといけない場合もあります。それはコロナ禍では無理なので、予めどういう条件で自動凍結になるかを確認しておいて、定期的にお金を動かしたりログインしておいた方がよいです。
- そして一旦アクセスが途絶えてしまうと復帰は、予想外に面倒なことがあります。
- ヘルプや問い合わせ機能で、パスワード自体はリセットできても、そのあとで結局現地電話番号SMSによる認証が必要で、結局ログインできない。
- ログインの方法を問い合わせしたいのに、ログインしないと問い合わせできない。すでに仕組みとしておかしいですが、そういうのはよくあります。
出国後、連絡手段別の問題点
インターネットバンキングが途切れても、その国にいるときは簡単に復帰できますが、出国後はいろいろと難しいです。手紙・Eメール・電話・オンラインコールとなると思います。
- 電話(SMS)
- 現地の電話番号はすでにないので初回登録やSMSによるワンタイムパスワードを受け取れないという場合もあります。
- 現地の電話番号しかそもそも受け付けていない(ネットだと電話番号フォームに入力できない)といったこともあります。
- 問い合わせ先の電話番号が特殊な番号で、日本からは絶対かけられないケースもあります。
- 電話の問い合わせで解決できることもたまにありますが、日本のコールセンターみたいな親切はないと言ってよいですし、たらいまわしも多いです。
- Eメール
- 海外-日本間のEメールはスパム扱いされて本当に届いてないこともあるので、要注意です。
- Eメール届いてない場合に、念のために確認メールだしてくるといったレベルの親切はほぼないです。せっつきましょう。
- 住所
- 引っ越し後に住所更新するときに、住所証明が必要な場合があります。このとき日本の住所の証明はやっかいです。
- 住所更新時の住所の証明として、最近の公共機関の領収書等を要求されることがありますが、日本の領収書は日本語で書かれており、また「令和3年」のように西暦で書いてないこともあるので、証明にならない場合があります。説明すれば大丈夫な場合もあるので説明しましょう。
- 住所の更新をしないと最重要な連絡が届かないケースがあるので忘れずにしましょう。前述の「租税条約に関する届出」 もそうですが、前に住んでた国の税金の申告書類が届くケースもあります。
- 引っ越し後に住所更新するときに、住所証明が必要な場合があります。このとき日本の住所の証明はやっかいです。
- 手紙
- 一番遅いですが、手紙なら電話・Eメール・インターネットバンキングではできないことも、できることが多いです。
- しかし手紙の遅延もあります。届いたかどうかの確認を担当者に連絡できるようにコネクションを用意しておいたほうがいいです。
- 担当者(銀行の担当者・ファイナンシャルアドバイザーなど)
- 海外を去る前に担当者の連絡先を増やしておきましょう。メールもCCを複数人に増やすのが重要です。
- 海外へ送受信するメールは届いていないことが普通にあるので、1人しか担当者がいないとそれで気づかずに途切れることがあります。
- 単純に退社やご不幸等で連絡が続かなくなることもあります。
- 銀行によっては、ある程度の預金額を越えているとちゃんとした担当者がつくプレミアムサービスがあるケースもあるので、利用できるなら利用したほうがよいと思います。
日本にいる間にやっておいた方がよいこと
- 海外通貨が扱えてインターネットバンキングができる銀行口座
- インターネットで申し込み手続きができる銀行ありますが、結局、確認通知を日本の住所で郵便で受け取る必要があるので、日本にいる間に作っておいた方が便利でしょう。帰国の際に、海外にいる間に済ませられることが増えると思います。
- 海外通貨が扱えると、円に戻して為替手数料が取られることがないので、便利です。
おわりに
アドバイス・間違いの指摘等があったら随時更新しますのでお知らせください。
*1:以前は銀行との送金との比較表示で数%の差がでてたときもあったのですが、最近は最安の手段と比較するようになったので、送金手数料は実はあまり変わらないような気もしてきました。